◆マジックの価値を理解して、それを伝えるために!!
原著は1995年刊、2009年に第17章の「会話編」を加えた増補版が、いずれもスティーブン・ミンチ(Stephen Minch)氏が経営する出版社、HERMETIC PRESSより発行されました。
世界で高く評価される本書は、マジック分野で著名な二人の哲人であるユージン・バーガーとロバート E.ニールが、「世間で演じられるマジック的なもの」の起源を、心理学の視点から、マジックを何かの象徴として捉える視点から、そして精神世界を探る視点から解き明かしていきます。二人の考え方は異なり、時に意見が対立します。しかしマジックを研究する根底は共通する立場でこの問題と対峙していますので、最終的にはエンターテインメントとしてのマジック、そして「それ以上の何か」でもあるマジックについて、一致した見識に到達します。
ロバート E.ニールは、酒の醸造を思わせる本書での哲学的思索に、七つのトリックを加えて、それを味わい深いものとしました…そのうちの三つのゴスペル・マジックの現象は、きっと多くのゴスペル・マジシャンに衝撃を与えることでしょう!この三つのトリックと、その奇抜な見せ方(プレゼンテーション)によって、ニール式「マジックに意味を吹き込む方法」が語られるのです。ニールは本書の中で、これらのトリックについて、次のように述べています。「『これはすごい』と感じる方はあまり多くはないかもしれません。でも、そこで語られる寓話をきちんと理解してもらえたなら、全ての皆さんが『これはすごい』と感じられることでしょう。」
こうして、新しい考え方が満載の本に仕上がりました。その新しい考え方に触れることで、読者の思考はフル回転することでしょうし、太古のマジックでありながら革新的に見える演技を考えるための糸口が、見えてくることでしょう。本増補版には、二人の著者が後に追加した小論も収載されています。そこでは、本書を通じて読者に伝えたい事柄がさらに熟考され、より多面的に述べられています。本書は頑固で内向き思考の方や想像力に乏しい方には向きません。本書は、マジックの演じ方、見せ方について、新しい展望を切り開いていこうという思いで編まれているのですから。目指すは「本物の魔法」!
「マジックと意味」はマジシャンにとって重要な本ですが、その内容は英語を読む人たちだけのものでした。その理由のひとつは、本書の思想が繊細かつ難解で翻訳が容易ではないからです。田代茂博士は、その能力と信念のもと、バーガーとニールの言葉を忠実に再現しつつ、その翻訳を堂々完成されました。彼の翻訳は、自らの演じるマジックと自らが対峙する観客とを大切に思う日本のマジシャンならどなたにとっても注目に値する成果といえます。
-スティーブン・ミンチ
マジックがどれほど尊いものなのか、考えてみたことはあるでしょうか?マジックはただの演芸でもなければ、その場しのぎのお慰みでもありません。本書では、マジックが人間の生命や精神と深くつながってきたことが、(そして現在でもつながっていることが、)数々の事例を基に示唆されていきます。太古の人々の生活を探る文化人類学の調査、聖書の一節、カフカの小説にまで言及され、日本の文献として一休禅師の言葉までが引用されています。日本語訳にあたっては、緻密な文献調査のほか、各分野の専門家の意見を伺うなどして、正確な翻訳に努めました。マジックには極めて重要な意味が込められています。演者自身がそれを体現し、演技を通して観客に伝えられた時、そのマジックは観客の心に確実に刻み込まれることでしょう。本書で解説される7つのマジックは、観客の心に届くマジックを演じるという著者の狙いを形にした、わかりやすい実例となっています。初心者から専門家まで、本書を読まれることでその方なりの新しい視界が開け、進むべき道が自ずと明らかになってくることに疑いはありません。
-田代 茂
仕様:
全276ページ、サイズはA4版で、厚さ28mm、重さ1,200gです(誤差あり)。本文には写真14点、図46点、表5点が含まれています。(写真は「訳者あとがき」に1点加わり、原著より1点多い。)ハード・カバー。ダスト・カバー付き。
内容:
「第13章」は存在しません。第7章、第8章、第10章、第12章、第14章は、マジックの解説が含まれています。第12章には3つのマジックが解説されているため、本書では7つのマジックが解説されていることになります。